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2023年12月6日 | プレスリリース 2023年度島津賞・島津奨励賞受賞者決定 -研究開発助成は23件を選定-

公益財団法人 島津科学技術振興財団(理事長 榊裕之)は12月4日に開催した当財団理事会において、第43回 (2023年度)島津賞受賞者1名、島津奨励賞受賞者3名、および研究開発助成金受領者(領域全般20名、新分野3名)を決定しましたのでお知らせいたします。

当財団は、科学技術に関する研究開発の助成および振興を図る目的で1980年に島津製作所の拠出資金により設立され、2012年4月に公益財団法人に移行しました。基本財産は約31億円です。島津賞は、『科学技術、主として科学計測に係る領域で、基礎的研究および応用・実用化研究において、著しい成果をあげた功労者』を表彰するものです。島津奨励賞は2018年度に創設された顕彰事業であり、『科学技術、主として科学計測に係る領域で、基礎的研究および応用・実用化研究において独創的成果をあげ、かつその研究の発展が期待される国内の研究機関に所属する45歳以下の研究者』を表彰するものです。

また研究開発助成は、『科学技術、主として科学計測に係る領域で、基礎的研究を対象とし、国内の研究機関に所属する45歳以下の研究者』を助成するもので、2018年度からは、当財団が設定した科学計測に係る新しい分野を“新分野”として別枠で選出しており、今年度は『先進情報技術を用いた計測技術・解析技術の前線開拓分野』をテーマとして募集しました。
『新分野』は、『領域全般』と区別して助成を募集しています。今年度は、領域全般で20件、新分野で3件の総計23件を選出しました。採択となった研究は、いずれも先端技術に関するもので、今後その成果・発展が期待されます。

1.島津賞

当財団の推薦依頼学会に推薦依頼し、推挙された中から、当財団選考委員会および 理事会にて、受賞者1名を選出しました。受賞者には、表彰状・賞牌・副賞500万円を贈呈いたします。

 

受賞者

京都大学 大学院医学研究科
教授 岩田 想氏

京都大学 大学院医学研究科 教授 岩田 想氏
受賞業績 膜タンパク質の3次元から4次元構造解析方法の開発
推薦学会 日本生物物理学会
受賞理由 岩田想氏は1992年以来、一貫して医学・生化学的に重要な膜蛋白質の構造生物研究を行っており、自ら立体構造等を解明した生理的に重要な膜蛋白質は16種類に及び、名実ともこの分野における世界的なリーダーの一人と言える。
さらに、従来、X線結晶構造解析、NMR、電子顕微鏡などによる生体高分子の立体構造は、いずれも測定に通常数ミリ秒以上の時間が必要であったのに対し、X線自由電子レーザの適用を可能にすることで、化学結合の切断に要する時間である数10fs以下の時間で測定可能とした。この成果は、生体高分子結晶中の蛋白質の動きを実時間観察するシステムの構築を可能とし、生体高分子構造の実時間反応動画を撮影という4次元解析をも可能とした。このように新しい研究分野を切り拓いた優れた業績を高く評価した。
用語解説

ヒトのタンパク質のうち、30%程度が細胞表面の細胞膜に存在する膜タンパク質であることが知られている。これらの膜タンパク質は、その形を変えることで、細胞を制御する情報の伝達、細胞内外への物質の輸送、生命活動に必要とされるエネルギーを生産するなど、生体にとって不可欠な役割を果たしている。
市販の医薬品の半数以上は、このような膜タンパク質に働きかけ、その機能を制御することによって、薬効を発揮している。このため、これら膜タンパク質の詳細な形を理解することは、生体における働きを解明するだけでなく、新しい医薬品を開発するための重要な手がかりとなる。
受賞者は1992年にドイツに留学して以来、一貫して医学・生化学的に重要な膜タンパク質の原子レベルでの形を明らかにする研究を行ってきた。初期には、呼吸や光合成など生体におけるエネルギー生産に関係する膜タンパク質の形を決定し、その働きや、関連する遺伝病の原因を明らかにするなどの研究を行った。その後、膜タンパク質の形を決定する新たな技術の開発にも取り組み、実際に医薬品の標的となっている重要な膜タンパク質の形を決めるなどの業績を上げ、この分野における世界的なリーダーの一人となっている。
生体の中でタンパク質分子は形を変えながら働いている。このためタンパク質の形状変化を観測する技術の登場が長く望まれていたが、これまで適用されてきたX線結晶構造解析、核磁気共鳴(NMR)、電子顕微鏡などの手法では、静止した形しか明らかにすることができなかった。しかしながら最近実用化されたX線自由電子レーザという装置から発する非常に強く短い時間だけ光るパルスX線を用いると、動いているタンパク質の一瞬の形を捉えることができる。この光源を利用しタンパク質の動きをコマ送りの動画のように記録することができるようになった。受賞者は日本のX線自由電子レーザSACLA注1, 2において、トリガを用いてタンパク質内での反応を開始させ、その後の動きをコマ送り動画として捉えるシステムを構築し、まず光受容性タンパク質であるバクテリオロドプシン注3が光照射によってその形状等を変化させる様子の観測に世界で初めて成功した。さらに、このシステムを光合成に中心的な役割を果たすタンパク質(光化学系II)に応用し、岡山大学の沈建仁教授との共同研究により、水を分解し酸素が発生する反応の過程を観測することに成功した。
これらの成果により膜タンパク質の動きを原子レベルで詳細に観察する技術を確立し、生体におけるタンパク質の働きへの理解を深めたり、またそれに基づいて新しい医薬品を開発したりすることへの道が開かれた。

用語説明

注1 X線自由電子レーザ
電子ビームを加速させ、磁場により周期的に強く蛇行させることで、蛇行の進行方向に干渉性のある(波長・位相が揃った)X線を発生させるレーザ装置。非常に高い強度の短パルス・レーザ光を発生させることができる。

注2 SACLA
SPring-8に併設されたX線自由電子レーザ施設。理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設、整備を行った。その愛称(公募により決定された)が「SACLA(さくら)」。同施設は、グッドデザイン賞、第42回日本産業技術大賞(文部科学大臣賞)を受賞している。

注3 バクテリオロドプシン網膜の光受容性(ひかりじゅようせい)タンパク質であるロドプシンの類縁のタンパク質が古細菌の細胞膜に存在し、微生物(バクテリオ)ロドプシンと呼ばれている。バクテリオロドプシンは、そのタンパク質内に結合しているレチナールという感光性分子に吸収された光を使って,プロトン(水素イオン)を細胞内から細胞外に運び、エネルギー産生にも深く関わっている。一方の動物に存在するロドプシンは、目の中の光センサーとしてヒトの生体中(網膜内)でも利用されている。

 

受賞業績のコア技術となる高速分子動画法の概念図

受賞業績のコア技術となる高速分子動画法の概念図

2.島津奨励賞

当財団の推薦依頼学会および当財団関係者に推薦依頼し、推挙された中から、当財団選考委員会および理事会にて、受賞者3名を選出しました。受賞者には、表彰状・トロフィ・副賞100万円を贈呈いたします。

 

受賞者

東京工業大学 生命理工学院
教授 神谷 真子氏

東京工業大学 生命理工学院 教授 神谷 真子氏
受賞業績 革新的バイオイメージングを実現する高精度化学プローブの開発
推薦者 過年度島津賞受賞者
受賞理由 神谷真子氏は、各分野でのイメージングニーズを的確に捉え、色素分子を精緻に機能化することで、画期的なイメージングを達成し得る多数の化学プローブ(蛍光プローブ、ラマンプローブなど)の開発に成功した。その一部は実用性が評価され市販化に至っている。具体的には、細胞内滞留性を劇的に改善した蛍光プローブの設計法を確立し、がん細胞の1細胞検出の実現に大きく近づいた。また、自発的に光明滅を繰り返す蛍光プローブを開発し、超解像蛍光イメージング法に応用することで飛躍的な進展をもたらした。さらに、Activatable型ラマンプローブの論理的設計法を確立し、生体機能の多重検出を可能とした。
これら多岐に渡る新たな機能を有する化学プローブ群の開発という業績が、次世代のイメージングの世界を切り拓くであろうことを高く評価した。

 

受賞者

東京大学 大学院新領域創成科学研究科
教授 岩崎 渉氏

東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授 岩崎 渉氏
受賞業績 生態系の大規模高精度観測・予測を可能とした環境核酸計測法の開発
推薦者 日本分子生物学会
受賞理由 岩崎渉氏は、まず、魚類から環境中に放出される極微量のDNA分子を分析することで、対象の水域の魚類叢の精緻な全体像を観測可能にする観測技術・情報解析技術を開発した。その解析用のデータベースには年間12万件を超えるアクセスが世界中から行われるなど、我が国発の技術として国際的デファクトスタンダードの地位を確立している。また、異なる環境間の微生物生態系を相互に比較・可視化する情報解析技術を開発し、変動し続ける地球環境下において生態系を支える微生物が今後どのように変化していくかを予測することを世界で初めて可能にした。前者の技術は、環境保全・生態系保全、新種・外来種の検出や水産業における魚種分布把握など多方面で活用され、後者の技術は有用物質を作り出す微生物の設計・改変や、薬剤耐性病原菌の出現予測への展開が期待されている。このように、その業績が社会に大きく貢献している点を高く評価した。

 

受賞者

大阪大学 蛋白質研究所
特任准教授 中根 崇智氏

大阪大学 蛋白質研究所 特任准教授 中根 崇智氏
受賞業績 構造生物学の空間分解能と時間分解能を向上し原子の動きを捉える解析技術の開発
推薦者 財団関係者
受賞理由 中根崇智氏は、オープンソースのクライオ電子顕微鏡単粒子解析(SPA)ソフトRELIONの開発チームに所属し、従来近似もしくは無視されていた電子光学系の収差・倍率異方性・Ewald球の曲率などを適切にモデル化して補正することで高分解能化を推進した。この結果、蛋白質のSPAとして世界で初めて真の原子分解能を達成し、水素原子可視化などに成功した。また、連続的構造変化を捉える 
Multibody 精密化も開発した。X線自由電子レーザによるシリアルフェムト秒結晶学(SFX)では、微弱な信号を的確に捕捉する高精度なデータ解析法を確立し、微量な試料・短い測定で実験的位相決定や時分割構造解析を可能とした。
これらの成果は、分子生物学、創薬のみならず、人工光合成などのグリーンケミストリーの実現など、多くの分野に寄与する優れた業績であると高く評価した。

 

3.研究開発助成(23件)

応募のあった中から、当財団選考委員会および理事会にて研究開発助成金受領者を下記の通り選出しました。1件あたり100万円の研究開発助成金を授与いたします。科学計測に係わる領域を広く対象をしてとらえた「領域全般」への応募から20件を選定し、加えて、当財団が設定した科学計測に係わる領域で、今後重要となると考えられる新規な分野を対象として助成する「新分野」(今年度のテーマは、『先進情報技術を用いた計測技術・解析技術の前線開拓分野』)への応募から3件を、それぞれ選定しました。採択となった研究は、いずれも先端技術に関するもので、今後その成果・発展が期待されます。

 

領域全般 20件(助成総額2,000万円)

 
 
研究者(五十音順)
研究題目
助成金額
1 九州大学
薬学研究院 
助教 石井 千晴
腎機能診断を目指したキラルアミノ酸の多次元LC一斉計測法開発 100万円
2 東京理科大学
工学部 機械工学科
嘱託助教 市川 賀康
粘弾性流体の複雑挙動解明に向けた時系列応力分布計測法の開発 100万円
3 阿南工業高等専門学校
創造技術工学科 化学コース
准教授 上田 康平
超高圧下定積状態の熱量・圧力同時測定装置の開発 100万円
4 群馬大学
重粒子線医学推進機構 重粒子線医学研究センター
講師 尾池 貴洋
DNA損傷の超高解像度解析による重粒子線治療の新論理体系構築 100万円
5 電気通信大学大学院
情報理工学研究科 機械知能システム学専攻
助教 大下 雅昭
脳へ埋込可能なプラズモン型化学センサによる神経ペプチド計測 100万円
6 大阪大学大学院
理学研究科 物理学専攻
准教授 大塚 洋一
1細胞質量分析イメージングによる疾患組織の可視化 100万円
7 千葉大学大学院
薬学研究院 
助教 甘中 健登
α線のリアルタイム検出を目指したα線-光検出器の開発 100万円
8 弘前大学大学院
理工学研究科 理工学専攻
助教(独立PI) 関 貴一
顕微界面振動分光法による,界面分子・電子環境の高精細解像 100万円
9 東京大学
生産技術研究所 物質・環境系部門
講師 坪山 幸太郎
タンパク質構造安定性の超並列測定技術とその予測モデル開発 100万円
10 京都大学大学院
理学研究科 生物科学専攻
助教 寺川 剛
生成系人工知能による高速AFMデータの高解像度化技術の開発 100万円
11 豊橋技術科学大学大学院
工学研究科 応用化学・生命工学系
助教 中神 光喜
液体クロマトグラフィー用細繊維状ポリイミド固定相の開発 100万円
12 京都大学大学院
理学研究科 化学専攻
助教 中曽根 祐介
階層的な細胞内分子ダイナミクスの時空間分解計測法の開発 100万円
13 金沢大学
理工研究域 地球社会基盤学系
助教 濵田 麻希
惑星の高カルシウムアルミニウム含有物形成温度圧力推定のためのメリライトの構造解析 100万円
14 東北大学
工学研究科 航空宇宙工学専攻
助教 原 勇心
セミアクティブ制御を用いた圧電素子による自己給電構造物損傷検出法の開発 100万円
15 筑波大学
計算科学研究センター 生命科学研究部門
准教授 原田 隆平
タンパク質の複合体と相互作用を高精度に計測する計算技術の開発 100万円
16 九州大学大学院
理学研究院 化学部門
准教授 堀尾 琢哉
イベント駆動型画像センサーによる超高速光電子画像計測法の開発 100万円
17 大阪大学医学部附属病院
腎臓内科
医員 松本 あゆみ
腎臓病理診断AIの開発 100万円
18 大阪大学大学院
医学系研究科 生化学・分子生物学講座 遺伝学教室
特任助教 南 聡
エクソソームを用いたオートファジーモニタリング方法の開発 100万円
19 千葉大学大学院
工学研究院 総合工学講座
准教授 山田 泰弘
含窒素グラフェンナノリボンの構造解析 100万円
20 理化学研究所
開拓研究本部 Kim表面界面科学研究室
専任研究員 横田 泰之
2探針プローブによる電気化学界面の化学種識別と局所物理量の同時計測 100万円

 

新分野 3件(助成総額300万円)

【今年度の募集テーマ】『先進情報技術を用いた計測技術・解析技術の前線開拓分野』
 
研究者(五十音順)
研究題目
助成金額
1 茨城大学大学院
理工学研究科
助教 倉持 昌弘
先進情報解析を用いた物質動態のX線ブリンキング計測 100万円
2 大阪大学
産業科学研究所 第一研究部門
准教授 中村 友哉
拡散モデル正則化を駆使した高精度レンズレスイメージング 100万円
3 大阪大学大学院
医学系研究科 器官制御外科学整形外科
助教 藤森 孝人
マルチモーダルAIを活用した骨掘削ドリルの開発研究 100万円

 

島津賞表彰式・研究開発助成金贈呈式、並びに島津賞受賞記念講演は、次の通り行います。

日 時 2024年2月20日(火)
次 第 表彰・贈呈式 13:30~14:40
    島津賞、島津奨励賞受賞記念講演  14:45~16:15
場 所 ホテルオークラ京都(京都市中京区河原町御池)

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